鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

白昼夢の森の少女

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【読書日記】5/20読了

『白昼夢の森の少女』恒川光太郎角川書店

幻想的な小説を書かせたら、右に出る者はいない。

そう個人的には思っている恒川さんの短編集。

単行本に収録されてない、バラエティな作品たちです。

表題の植物化していく人々の話や、

時空を越える銀の船の話なんかが結構好きなんですが、

平成最後のおとしあな、っていう飄々とした

なんとも言えない面白さをもった作品もツボった。

ああ、こういう現実離れした本を読むのって楽しい。

 

 

 

 

 

 

トリニティ

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【読書日記】5/14読了

『トリニティ』窪美澄(新潮社)

窪さんの作品には、ハッとさせられるテーマ、

言葉が詰められていて、読了後にものすごい満足と

重たい〝何か〟を感じてしまう。それが心地よい。

本書は、昭和〜平成の出版界にいた三人の女性達が

それぞれの仕事、家庭、人生を振り返るという形式で

綴られているのですが、自分には超ストライクで……。

終盤の90年代とか、私事ですが同業でしたもので、

彼女たちとすれ違っていたのかも、なんて思ったりね。

(モデルはいるけど、あくまでフィクションです)

そんな出版業界の栄枯盛衰をずっと見ていると、

輝いていた彼女たちの濃密な人生絵巻ってえのが、

実にビビッドに浮かび上がってきまして、

読了後、ウムム……としばらく放心しておりました。

 

「女だって自由に生きていいのよ」

この言葉に象徴される本書のテーマは

時代、職業に関係なく、今後も問われるのでしょう。

 

直木賞候補に入ってほしいな。

 

 

 

 

 

 

同潤会代官山アパートメント

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【読書日記】5/7読了

同潤会代官山アパートメント』三上延(新潮社)

大正〜平成の70年間、そこで暮らした家族四世代の

それぞれにスポットを当て綴られた連作短編集。

造られた当初はモダンの象徴だった同潤会アパートが、

時をへてレトロと化していく。住んでいた曾祖父母も。

この「人の数だけドラマがある」という当たり前を

筆者はしっかりと捉えて、彼・彼女に寄り添って、

時代の空気を十分に含ませて表現してくれている。

その質感がとてもジワる。

 

個人的には今年のベスト3に入ります。(現時点でね)

直木賞本屋大賞も期待したいです。オススメですよ。

 

 

 

 

 

作家カフェ

昨日(5/4土)、八重洲ブックセンターさんで

作家カフェなるものが開催されるとのコト。

「来て来て!」とパイセン作家さんにお声がけを

いただきまして、冷やかしに行ってきました。

会場に着きますと、おお〜っ、盛況、盛況。

サイン会の延長みたいなノリで、

2時間も話ができて、で、作家さんの方も

読者の方々とじっくり話ができる。

それはそれは素敵な時間でありました。

書き手と読み手が居合わせる空間って

昔はなかったよね、と思いながら、それが現代では

SNSなどがあるけどね、と思いながらも、

それでも実際に顔を合わせて話をするなんて機会は

貴重だと思うのですよ。

こういうイベントがもっともっと増えますように。

原爆 広島を復興させた人びと

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【読書日記】5/2読了

『原爆 広島を復興させた人びと』石井光太集英社

令和に入ってからの読書1冊目。昭和の記憶を刻む。

著者は眼を覆いたくなるような事件現場に足を運び、

その出来事を真摯にとらえ、読み手に伝える名手ですが、

今なぜ広島なのだろうと思って読んでみると、

そこには忘れてはいけない戦争の悲劇だけではなく、

悲劇を後世に伝えようと奮闘した三人の男たちの物語が

描かれておりまして、その生涯が息呑む濃密さで……。

カタチとしての記録はリアルに見る者に表されますが、

思いとしてのリアルは、言葉に起こさないと残らない。

それが本書からヒシヒシと伝わってくるんですよね。

 

広島、行かないとなあ。

 

 

 

 

 

不定期連載9

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第九話「地下鉄車内にて」

仕事柄、電車などに乗っているときに

人間ウォッチングをしています。

小説のお師匠様に

「作家は電車内で本を読まず、人を見よ」と

教えられたのを実践しているワケです。

 

昨日、編集者さんとの打合せで都心に向かう

地下鉄に乗っているとき、面白かったのが、

横の若い女性が、スマホで熱心に動画を見ている。

何だろう……と気になってチラリと覗いたら、

「上手なウナギの捌き方」の解説動画だった。

貴女、捌くのですか? ウナギを捌くのですか?

心の中で彼女のずっと問いかけておりました。

 

そして本日は定期通院でまた地下鉄に。

私は吊革につかまっておりまして、前に座っている

これまた若い女性がスマホを見ているのですが、

今回はスマホの内容ではなく、彼女の手の甲に

思わず視線が釘付けになってしまいました。

 

よくある話ですが、忘れモノをしないように

手の甲にペンで書いている方っていますよね。

彼女がそれでした。何か書いてある……。

よーく見ると。

 

きゅうり

 

という3つの言葉が手の甲に……何だろう?

買い物リストにしては少ないのではないかと。

それに「川」って何だ? ああ、もしかして

GWにバーベキューをするべく、場所予約とか。

あ……目が合ってしまった。

ちょっとこっちが照れくさくなって逸らしたのですが、

彼女はまだこっちを見ております。

ややあって、彼女が発した言葉に衝撃を受けたのです。

 

 

「クェッ!」

 

作家の人たち

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【読書日記】4/5読了

『作家の人たち』倉知淳幻冬舎

旧知の編集者さんからいただいたこの本。4/11発売です。

定期通院へ向かう地下鉄車内〜病院待ち時間で読了。

そして一言「しゃ、洒落になってない……(苦笑)」

出版界の内情を「毒」をもってフィクション化する

小説ってえのは多々ありまして、

例えば東野圭吾さんの「◎笑小説」シリーズだったり、

中山七里さんの「作家刑事 毒島」だったりするわけで

この業界の隅っこにいる自分としては「わあぁ……」的な

話が多いワケです。でもってこの倉知さんの作品ですと

売れない作家の押し売り、作家業で食って行けない現状、

およびラノベ業界の恐るべき実情なんかがフィクションで、

ええ、あくまでもフィクションで語られているわけです。

でもこれ、どこまでがフィクションなのだろう。

それを考えると薄ら寒い風がウナジをスゥ、と撫でる。

変名にはしてるけど出版社や作家さんにモデルがいるわけで

でもって実名が出ているところは出ているわけで。

ああもう、この面白さは同業者じゃなくっても、

本好きの人なら入り込んでしまうんでしょうね。

かくいうワタクシメも作中のトホホキャラに近いもんで

ああ、これが現実、これが私の生きる道と頷いています。

ま、笑い飛ばしちゃうのが一番の楽しみ方なのでせう。

 

くわばら、くわばら。