私事、モーニングルーティンで
古今の名作を一見開きずつ写文しております。
去年の夏から続けていたのが三島由紀夫の『春の雪』。
半年以上かけて、昨日、結願となりました。
大正期の華族社会を描く、映像化もされた名作ですが、
一字一字追っていくと、三島の筆致が見えてくる。
それをなぞっていくのは新鮮な作業でありました。
さあ次は谷崎潤一郎でも写文しようかな。
【読書日記】4/1読了
ども、ごぶさたす。本は毎晩読んでいるのですが、
紹介したいものは……なかなかなく、と思ったら、
東山さんの新作が、なかなかに刺激的でしたのよ。
4つの中短編集。各話の関連性はないようですが、
それぞれの話の「濃さ」が、なかなかにいいなと。
ヒリヒリするような筆致は、この著者の味ですが、
設定がありそで、いや、なさそな着眼点が見事で、
これは唯一無二の世界観だなあと。
直木賞作家さんだけれど、掲載誌は『群像』などでして、
たしかにこれ、文学だなと思った次第でした。
本好きが好きになる本、みたいな印象です。おすすめ。
【読書日記】2/15読了
テーマはド直球で「家族」。
このテーマは小説の鉄板として昔昔からあるわけで、
巨匠達がこれでもかと重厚な物語を描いている。
では窪さんが描く家族とは? と読んでみる。
冒頭は新しい命が誕生する、ごく平凡な家庭のはずが、
徐々に歯車が狂いはじめて濃密な展開になる。
このあたりは窪さんの著作をずっと読んでいる身として
うむうむ、だよねえ、となるわけだけど、
思うに家族ってのは、一人一人の人間が集まったもので、
確執もあれば相愛もある。
だから面白いのかも知れないが、ここに時を経ての
変化が生じることから、グイグイと引き込まれる。
小さな幸せを噛みしめていた母親が、
後半、息子の視点になることによって他人になる。
その変化! 当たり前のようで、これはこの人にしか
書けない小説だなあと、舌を巻くカメレオン。
令和の世となった今、新しい家族の小説がここにある。
特にP278〜279、祖母が孫に語るセリフが、もう……。
「……今はおだんごみたいに一緒にくっついているけれど、
そこから一人離れ、二人離れていくんだよ。家族って、
そういうもんだろいう」
「それでも家族は家族。離れて暮らしていても、心さえ
通じ合っていればそれでいいんだよ……」
なかなかに刺さりました。
オススメしたい一冊です。
【読書日記】2/3読了
『今夜』小野寺史宜(新潮社)
ああ小野寺さん、巧いなあとうなずく。
市井の人々を描かせたらピカイチなのだが、
今作は群像劇、でありながら登場人物が
随所で絡んでくる。ある一夜を軸にして。
今夜は一度きりだが、四人の人物には
四つの今夜があるわけで、
しかも四つのストーリーが存在する。
当たり前だけれど、当たり前を書ける人は少ない。
一人一人の思いが行間から溢れてくる。
東京の町が見えてくる。
鬱屈として、やるせなくて、それでも生きていく人の
息づかいが活字から聞こえてくる。
素敵な本だと思う。出会えたことに感謝したいです。
【読書日記】1/30読了
『羊は安らかに草を食み』宇佐美まこと(祥伝社)
宇佐美さん作品はずっと注目しているのですが、
ますます凄みが増してきていると思っております。
例えば去年読んだ『ボニン浄土』も
「うわ、何これ、すご……」と圧倒されましたし。
そして本作も、グイグイ引き込まれました。
三人の老女のロードストーリーと思いきや、
主人公の回想譚における、満州引き上げの話と
徐々にわかってくるその後が深くて、重い。
ひっさびさに本を読んだぁ、って感覚になりました。
ああオレ、こんな本を読んでなかったなあと。
ああオレ、こんな本を読みたかったんだあと。
ありがとうございました。楽しませていただきました。
勉強させていただきました。