鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

小さな場所

f:id:maehara63:20191207173619j:plain

【読書日記】12/7読了

『小さな場所』東山彰良文藝春秋

読んでよかったな、と心から思える本が

年に数冊ありますが、これがそれ。

台北の紋身街(日本だと歌舞伎町かな)に

暮らす少年の目を通して描かれた、

雑多な、猥雑な、街の、人々の物語。

街の匂いがページから漂ってくるような

筆致が、どうにも心地いいんですよ。

馳星周でもあり、村上春樹でもあり、

でもこれが東山さんならではの作品なんだと。

もうね、

ずっとこの物語の中に浸っていたい。

この甘美な修辞の海に漂っていたい。

ほんわかとした読後感の残る作品でした。

 (是枝監督の映画で観てみたいな)

台湾好きの友人におすすめしたいです。

 

 

 

 

 

 

欺す衆生

f:id:maehara63:20191205084340j:plain

【読書日記】12/4読了

『欺す衆生月村了衛(新潮社)

著者の作品にはじめて触れたのは『土漠の花』(幻冬舎)でした。

こんなリアルなものを書く人がいるんだと、驚いたの覚えてます。

かと思えば、こんな 爆笑ギャグ小説 も書かれており、脱帽。

ああ、こういう方こそ「小説家」なんだなあと。

 

さて本作、今年の山田風太郎賞でした。(授賞式行きました)

ざっくり言うと、詐欺師の半生を描いたノワールもの。

原野商法、牛肉、海外ファンドなどなどに手を染めていく。

最初は気弱な主人公がだんだんと黒く染まっていく様が

もうなんともリアルでして、このリアルさは何だろうと

考えてみると、個人的に好きな黒川博行先生のノワールものに

通じるものがあるんだなあ、と。893、出て来るし。

これでもかと悪い話のオンパレードながら嫌悪感がないのは

彼も一人の人間である、という描き方で身につまされるから。

きっと、どこにでもいるような人で、話であったりする。

だからこそ面白く、怖く感じるのでありました。お見事です。

 

 

本日発売です

本日(11/29)、

世の中的には「いい肉」の日でもありますが、

この本の発売日でもあります。

 

f:id:maehara63:20191129082514j:plain

 

ラストで君は「まさか!」と言うシリーズ最新巻

真夜中の動物園 』でございます。

(表紙:動物の足跡なんですよ、お洒落!)

 

一昨年の シリーズ第一作目 を書かせていただいてから

早いもので、もう10作目になるのですね。

 

25話中、プロローグ含め8作の短篇を担当しております。

ほっこりした話から、ちょっとブラックな話、個人的には

超短い「いつかオレたちも」っていうおバカ話が大好きです。

    ↑

気になった貴方。書店さんの児童書コーナーにありますから、

手に取っていただき、P108を開いてみてください。

そして、あまりのバカバカしさに笑ってしまったら、

手にした本を、そのままレジに持っていってくださいませ。

 

昨年は、スピンアウト作品の

Q部あるいはCUBEの始動 』も出させていただきました。

 

これね。

 

f:id:maehara63:20191129083140j:plain

 

おかげさまで「おもしろーい!」っていう感想が

寄せられております。ホント、嬉しいです。^^

 

この「ラストで君は「まさか!」と言う」シリーズ、

小学校の朝読書にぴったりですから、読書が苦手な方でも

するりと入ってしまう、一品でございます。

 

でもって、同じく本日(11/29)、

同シリーズ「涙の宝石」編も発売となっております。

こちらは、嫁さん が書かせていただいております。

 

f:id:maehara63:20191129084616j:plain

 

こんな感じで、ほそぼそですが、面白い本を

作っていっておりますので、

今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

新刊情報

あいやもう、すんごく久しぶりの新刊ご案内でございます。

f:id:maehara63:20191120112432j:plain

『ラストで君は「まさか!」と言う』シリーズの新刊。

「真夜中の動物園編」 「涙の宝石編」です。

動物園は、ささきかつお、涙の〜は、ささきありが

それぞれ執筆に参加させていただきました。

朝読書にぴったりの、さくっと、でもって驚きの結末が

まっているショートショート集でございます。

お子様のX'mas プレゼントに、

お世話になっているあの方への御歳暮に、

租庸調の「調」として、

悪代官様への賄賂として菓子折りの底に、

大相撲九州場所、京都南座顔見せ、紅白歌合戦

などに出られる方への差し入れ……

あらゆるシチュエーションに合った1品でございます。

 

来週末ごろからお店に並ぶと思いますので、

ぜひ皆さま、お手にとっていただき、掴んだその本を

決して離さずレジへ向かってくださいませ。

伏して、よろしくお願いいたします。 <(_ _)>

 

 

 

【便乗してパブ】

こちら発売から1年、ご好評いただいております。

Q部あるいはCUBEの始動

あわせて、よろしくお願いいたします。

 

f:id:maehara63:20191120131725j:plain

 

 

罪の轍

f:id:maehara63:20191118100038j:plain

【読書日記】11/17読了

『罪の轍』奥田英朗(新潮社)

奥田さんのこの時代の作品としては、

『オリンピックの身代金』があり、

かなり引き付けられた記憶があります。

で、本作も前回の東京五輪前夜の話。

障害を抱える北海道出身の男が犯罪を重ね、

その足どりを捜査一課、および所轄の刑事が

丹念に追っていく様子を描いた長編です。

グイグイと読ませるのは昭和の風景と

人の吐息が聞こえてきそうなほどのリアル感。

最近だとこの感覚、柚木裕子さん作品に近い。

でもドップリの警察小説と違うのは、地元の女性、

犯人である男によりそった筆致があるからで、

決して一方面的な流れになっていない。

だから、まして、グイグイと読ませてくれます。

ギュッと内容が詰まった、高級な練り羊羹

食べたような読後感でした。満腹。満腹。

 

 

 

 

 

まくらばな

f:id:maehara63:20191117164716j:plain

【読書日記】11/17読了

『まくらばな』柳亭小痴楽(ぴあ)

あいやどうも、えらいご無沙汰でございます。

仕事で古今東西の名著を読み耽っておりまして、

自分の読書がなかなか出来なかったのです。

さてさて、後輩S君からいただいたのは、

今秋、真打に昇進された柳亭小痴楽師匠の、

それはそれは抱腹絶倒の自叙伝エッセイ。

故・柳亭痴楽の次男という家に生まれた故、

無頼な家族のトンデモ話が詰め込まれてまして、

どこをとっても笑える、驚ける。

でも、それだけじゃないのは著者が素晴らしい

噺家さんであるからであって、彼を育んだ

家族や師匠たちのエピソードが泣かせる。

特に桂歌丸師匠の付き人時代の話。これがいい!

先日、襲名披露を見に浅草に行きました。

錚々たる師匠方に囲まれた小痴楽さん、

愛されてるんだなって思いました。

また寄席に行こうと思います。

 

土に購う

f:id:maehara63:20191027112003j:plain

【読書日記】10/27読了

『土に購う』河﨑秋子(集英社

その土地の出の方にしか書けない小説というものが、

絶対にあると思っています。

例えば目取真俊さんの沖縄もの、

また例えば青来有一さんの長崎もの、

桜木紫乃さんの北海道ものも個人的には好きですが、

新たに、魂を揺さぶられる北海道作品に出会えました。

 

本書は北海道の産業を軸に、そこに生きる人たちの

暮らしを、それはそれは丁寧に紡いでいったもの。

養蚕、ハッカ、レンガ、蹄鉄、などなど。

ただのお仕事小説に終わらないのは、彼らの内面を

じっくりと見つめ、言葉に換えておられる所です。

これらがもう、溜息が出るほど濃密で、濃密で。

読むごとにハアッと持っていかれそうになる。

こういう読書体験は最近あまりなかったから、

とてもとても刺激になりました。

 

個人的には今年のNo.1だと思います。

この本のスゴサを、多くの方と共感したいです。