鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

世界で一番のクリスマス

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【読書日記】

『世界で一番のクリスマス』

 石井光太文藝春秋

 

凄惨な状況へ飛びこんでいくノンフィクションで

この著者の物書きとしての信念にはいつも脱帽しています。

近年は(おそらく取材源から発想された)フィクションも

手掛けられるようになり、それも注目しているのですが、

本作がそれ。上野〜鶯谷を中心とした、性風俗産業に関わる

人たちにスポットを当てたもの。

縁のない世界ですから、そのリアルがヒシヒシ伝わってくる。

ここで生きてきて、これからも生きていく人たちの覚悟も。

話の筋運びに引き込まれるのはモチーフもそうだけれど、

流れるような筆致にもある。黒川博行さんの大阪モノに近い。

とまれ、すこぶるアタリの1冊でありました。

何の予備知識もなく読んで、この表紙のお姉さんは誰と思って

調べたら、実は所収の短編作品のモデルさんだったのですね。

いやまあ、すごいですわ。

今後も石井さんの本は追って行こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空に泳ぐチョコレートグラミー

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【読書日記】

『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』

 町田そのこ(新潮社)

 

今年のMyナンバー1、おそらく確定。

タイトルだけ見るとフワフワした感覚の作品?と思いきや、

連作短編の、かなり深めの、ドスンとくる重いものでした。

関東の片隅の、小さな町で暮らす彼、彼女たちの日常。

一人一人にドラマがちゃんとあって、ちゃんと向き合ってる。

彼等の葛藤、対峙する運命、その絶望と希望をしっかりと

描ききっていて、ザラザラ、ヒリヒリとした読感に、魂を何度も

鷲掴みされる。こんな本、年に数冊しか出会えない。

R18文学賞の作家さん(豊島ミホさん、窪美澄さん etc.)は

とてつもない感性で、かなり読み手の心を抉ってくるので

大注目なんですが、また新たな書き手に出会えて嬉しいス。

同じ世界の片隅にいる身分として、襟を正す思いでした。

これはちゃんと小説に向き合えって神様のお告げかも……。

本作をtwitterで紹介してくれた池田エライザさんの

目利きぶりにも感謝ですね。

 

 

魂でもいいから、そばにいて

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【読書日記】

『魂でもいいから、そばにいて 3.11 後の霊体験を聞く』

 奥野修司(新潮社)

 

行方不明、関連死を含め、総数は1万9千人以上。

だがその数字は単なる記号ではなく、その時まで生きていた

一人一人の物語があり、残された人にも思い出がある。

非科学的、不謹慎とも取られてフォーカスされることが

少なかった震災後の霊体験を、著者は戸惑いながらも、

真摯に、正面から体験者に聞いて行く。

ことの是非はともかく、当事者にとってはタイトルの言葉に

その思いが詰まっていると思うのですよ。

個人的にフムと思ったのがP96のくだり、

「近代科学とは、たかだか四百年の歴史にすぎないのである。

生命の歴史四十億年の中の、たった四百年なのだ。

その程度の歴史で、理解できなければ排除することのほうが

おこがましいと言わざるをえないだろう。」

うんうん、ですよね。

 

それと興味深いのは東北という地域性でしょうか、

自分も東北の血をひくので「見えないもの」ってわかるんです。

 

 

 

 

 

 

無題

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秋田の新米

両親の在所が秋田県八峰町という米どころでして、

毎秋、本家のタカシ従兄から新米をいただいております。今年も!!!

なもんで今夜は「ごはん」がメインディッシュ。

それに合う “アテ” を揃えてみました。

玉子焼き、焼き鮭、昆布わさび、イカ塩辛、松前漬、明太子。

嗚呼、至福。

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橋ものがたり

『橋ものがたり』藤沢周平新潮文庫

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その筆致に憧れる先達に藤沢周平先生がおられます。

自分は時代モノは書かない(というか、書けない)のですが、

藤沢先生の物静かで、やわらかく、あたたかい視線が好きで、

自分もこんな小説が書ければなあと日頃思っているのです。

で、よくやるのが憧れの作家先生の作品を書き写すという習練。

いまはパソコンで入力していくのですが、

宮脇俊三浅田次郎団鬼六といった作家先生方の作品も

書き写させてもらいました。文体が自分のなかに入ってくるんです。

半年前に購入した『橋ものがたり』は藤沢先生の江戸市井もので、

庶民の暮らしを丁寧に、心情を豊かに描いた短編集。

本日(10/13金)、その全話を書き写させていただきました。

写経だな(笑)。結願。ご利益ありそうです。

 

 

 

 

 

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自由を盗んだ少年 北朝鮮悪童日記

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【読書日記】

『自由を盗んだ少年 北朝鮮悪童日記

金革(著)、金善和(訳) (太田出版

私事、リアルに弱い。泣きの映画、小説、TVドラマを

見せられても、それが作り物と思って泣けないでいる。

(あ、でも最近年取って涙腺緩くなったかも)

だがしかし、実話となると、どうにも感情抑制機能が

バカになってしまうのだ。

本書は脱北したストリートチルドレンの半生記。

近くて遠いあの国のことは謎だらけで、

それゆえにマスコミはあれやこれやとニュースにあげる。

識者などの伝聞、推測などをもとに伝える。

ニュースソースが乏しいがゆえに同じ動画が繰り替えされる。

まあぶっちゃけ、食傷気味になってくる。

こんなに非常時になっても、無関心になってる。怖い。

そんな時に読んだこの本は、1982年に生まれた男の話。

両親を亡くし、街をさまよい、死地をさまよい、

夥しい数の死体を見てきた「リアル」が綴られる。

かの国の内側にいた、瀕死だった当事者の話なのだから、

食糧難で荒んでいく人民の心がズバズバ伝わってくる。

こんなに近くに、こんなに最近に、でもって現在も

こんな状況が繰り広げられている、という現実を

一冊の本から知ることができる。なかなかに心が震えた。

うん、すごいぞ。いろんな意味で。