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鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

彼女がエスパーだったころ

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3/12読了『彼女がエスパーだったころ』

宮内悠介(講談社

あ、ども、またまたご無沙汰でしたね。

久しぶりにじっくりと読んだ本作、

オススメしたくてブログにアップします。

書名の通りエスパーとか、延命のナントカ水とか

ロボトミーとかカルトとか、話題になる出来事を

ある男の視点で、いつしか引きずり込まれる形で

話が進んでいくてな連作短篇集です。

これがね、ウエットな感じかなと思いきや

もの凄く乾いた感じがしてて、読ませるんです。

カートヴォガネットの小説を読んだような気分。

吉川英治文学新人賞を受賞とのことで

さらに注目してもらいたい本です。

 

 

 

また、桜の国で

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2/21読了『また、桜の国で』須賀しのぶ

ああ、更新ご無沙汰でしたね。

バタバタとしてました。

さて、先の直木賞は『蜜蜂と遠雷』に決まりましたが、

他の候補作も素晴らしいものが多かった今回でしたね。

先日読了したのが須賀さんのこの作品。

第二次大戦でのポーランド、そこで杉原千畝のように

ユダヤ人を救おうとした日本人青年の実話のような話。

フィクションでありながら、そのリアリティ、熱さに

絶賛の嵐が各レビューで起こってます。異議なしです。

蜜蜂と遠雷』がなかったら、この作品が受賞ではと。

まあタラレバはなしとして、一人の男の描き方がもう

超格好良くて、ドラマとしてしっかと読ませてくれる。

オススメしたい1冊であります。

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五十音ばなし「お」

「おしどり」

 

「是非ともこのワタクシを推していただきたい」
「おしどり」ならぬ「推し鳥」希望の鳥がいた。
洗濯物を取り込もうとベランダに出ていた時だ。
「ほら、アイドルグループでも、オシメンって」
「それは知っているが」と私は反駁する。
「何ゆえ、私が鳥を推薦しなければならぬのか」
「もうすぐ鳥界の総選挙があるのです。そこで」
「ナンバーワンを決めるとでも」
「はい」
「おヌシは、そこでナンバーワンになりたいと」
「いえ、上位20に入れば、レギュラーの座に」
「鳥のレギュラーってなんだよ」
「世間に認識していただける鳥、ということで」
「そんなの知らんがな」
「そこをどうにか、お力添えを」
やにわに推し鳥希望鳥は身体を屈め頭を垂れる。
鳥なりの土下座アピールだった。政治家かお前。
土下座を解こうとせず、私はただ鳥に困惑する。
「わかったよう。おヌシを推し鳥にするってば」
「ありがたき幸せ」
「でもよ。投票用紙入りCD買うとかは嫌だぜ」
「経済的負担は、おかけしません」
「では何を」
「ワタクシを推し鳥とする、と宣言して下さい」
「わかった。私は君を推し鳥としよう」
「クワアアア」
嬉しさと思える声をあげて、推し鳥希望の鳥は
拙宅のベランダからフワリと飛び立っていった。
やれやれだ、と私は残りの洗濯物を取り込んだ。
その鳥が総選挙でレギュラーになったか否かは
知るよしもない。って、何なんだよ、この話は。

室町無頼

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1/22読了『室町無頼』垣根涼介(新潮社)

(=゚ω゚)ノ 直木賞、惜しゅうございました。

でスミマセン、今ごろやっと読了です。

垣根さんは『ワイルド・ソウル』が個人的に

心に残ってまして、市井の人々のナニクソ的な

迫力に魂が鷲掴みされたのですよ。

本作も、室町という珍しい時代に挑み、

魑魅魍魎、跳梁跋扈の中に生きる若者を通し、

当時の息吹を感じさせてくれました。見事。

次回の歴史モノ、期待しております。

 

 

 

 

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五十音ばなし「え」

「えんぴつ」

 

「頑張ってください」

 銀行窓口のお姉さんが渡してくれたのは、

 合格祈願と書かれた細長い袋。

 

 愚息の受験が間近となり、

 受験料の振込をしたときのことだった。

 

 家に持ち帰って、開けてみると、

 鉛筆が入っている。よおく見ると。

「あ、五角形」

 

 多くの鉛筆は六角形なのに、なぜ五角。

「五角(ごかく)」=「(ごうかく)合格」

 語呂合わせなのだろう。やさしい心遣い。

 

 早速、学校から帰ってきた愚息に渡す。

 しばらくして「……これ、書きづらい」と。

 六角の形に慣れているため、

 五角が指にはまりにくいらしい。

 

 なかなか難しいものですねえ。

 とりあえず五角形鉛筆は受験当日、

 使わないけれど筆箱に入れることにしました。

 

 

 

 

 

 

五十音ばなし「う」

「うどん」&「器」

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写真は、いつぞやの昼飯

前日の鍋の残りに冷凍うどんを入れて、出来上がり。

ふと思って、ラーメンどんぶりに入れてみる。

なんとなく「うどん感」がなくなってしまう。

逆もそうじゃないかな。うどん鉢にラーメン。

あと、カツ丼をステンレスのカレー皿にとか、

寿司をお好み焼き鉄板に載せる、等の違和感。

やはり食べ物って、目でも味わうものなんだと実感。

 

 

 

 

 

 

五十音ばなし「い」

「いぬ」

 

「先走りました」
と私の前でうなだれていたのは
犬だった。

「一年、早く来てしまったのです」
その言葉に私は気がつく。
干支の犬、つまり戌(いぬ)だったのだ。

「誰にだって失敗はある。
 一年早く来ても誰も迷惑とは思わない」

なぐさめても表情は虚ろである。
「一度出てしまった以上、
 恥ずかしくて戻ることはできないのです。
 申(さる)にウキキと笑われるだろうし、
 辰(たつ)は火を噴いて怒るだろうし」

「まあまあ、そう落ち込まないで、ほら」
と言って、私は彼の後ろで息を荒くしている
存在を指さす。「フライングは君だけでない」
「あっ、いのし……」
気がついた戌は、成程といった顔をする。

「さすがは猪突猛進、やつは再来年ですね」
そこには鼻息荒い亥(い)がいたのだ。