鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

日暮れ竹河岸

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【読書日記】8/5読了

『日暮れ竹河岸』藤沢周平(文春文庫)

個人的な日課で、仕事に入る前にラジオ体操と筋トレ、

それが終わると敬愛する作家さんの作品を2P書き写す、

ということをしています。

桜の季節から始め、今日結願したのが、この短篇集。

浮世絵をモチーフに、江戸市井の人々のあれこれを

丁寧に、すこぶる丁寧に描いたひとつひとつが

溜息が出るほどに名文なんです。例えばこの情景描写、

 

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何度も、何度も、読み返してしまった。

ああ、こういう文章を自分もサラリと書けるようになりたい。

てなわけで爪の垢を煎じて……ではないですが、書き写し。

藤沢周平先生、勉強させていただきました。

ありがとうございました。

 

根に帰る落葉は

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【読書日記】7/27読了

『根に帰る落葉は』南木佳士(田端書店)

著者の作品に始めて出会ったのは、たしか30代、

医学生』(文春文庫)だったかと記憶している。

世にあまたある医療小説とは一線を画した、

心に染みるmy人生のベスト本となった。

その著者の、エッセイ集がこれ。

老境に入り、無理することなく日日を受け入れ、

過ぎ去った日々を眺めている短い随筆がずらり。

ひとつひとつが、丁寧に紡がれているから、

読む側も、その織りなす心の絵柄を味わえる。

とっても贅沢な一冊。

 

個人的にイイナと思ったのは、この本の装丁。

サイズが文庫本のそれで、ハードカバーなんです。

ああ、こういう手法があったのかと目ウロコでした。

 

 

 

夢は捨てたと言わないで

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【読書日記】7/23読了

『夢は捨てたと言わないで』安藤祐介(中央公論新社

著者の作品は、去年『本のエンドロール』を読み、

印刷業のデティールにこだわった渾身のお仕事小説に

魅了された記憶が新しくって、

なのでお笑いの世界をテーマにした本作も期待して、

でもって期待通りの面白さ、でした。◎

吉祥寺のスーパー、道楽者の社長の趣味で始めた

お笑いステージに立つ、社員でもある芸人たち。

一人一人にメッチャ癖があって、だから笑える、泣ける。

ま、詳しい話は本書を読んでいただければ楽しめますが、

ここでもお笑いコンテストや、ライブの臨場感が

もんのスゴイのは、やはり著者の取材力によるものでしょう。

だって著者自らネタを作ってM1予選に出場してんだもん。

恐れ入りました、ですよ。面白くないワケないです。

個人的には次の本屋大賞に推したいです。

書店員さんじゃないけど、私。

 

 

 

 

ラストで君は「まさか!」と言う[夏の物語]

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今日(7/9木)あたりから書店さんに並んでいると

思いますので告知させてください。

執筆に参加させていただきましたPHP研究所刊の

「ラストで君は「まさか!」と言う」シリーズ新作、

「夏の物語」です! ワァ〜パチパチ(歓声と拍手)

 

不肖ささきは、以下の5作を書かせていただきました。

 

●「夏フェス」

野外ロックフェスに毎年来ている男の話が、意外な展開に。

 

●「プシューッ!」

市民プールで遊んでいる、アホな中学生の話。

 

●「ありがとう、夕立」

塾の夏季講習に通っている男の子、女の子のキュンキュン恋バナ。

 

●「赤い車の女の子」

お盆の帰省ラッシュ。高速道路で見たものは……。

 

●「いちばん怖いのは」

人間に怖がられなくなった妖怪たちが立ち上がる。

 

他にも面白話が満載の1冊となっておりますので、

書店さんに行かれた際には児童書コーナーにある同著を

手に取っていただき、そのままレジに進んでください。

 

どうぞ、よろしくお願いいたします。 <(_ _)>

 

附記というか、余談。

この『ラストで君は「まさか!」と言う』シリーズ、

何冊か担当させていただいている私の作品にはちょっとした

「仕掛け」があるんです。今回の「プシューッ!」に

登場した中学生たちは、他の作品にも登場してるんですよ。

 

「時のはざま」「望みの果て」「恐怖の扉」「不思議な友だち」

そして「Q部あるいはCUBEの始動

よかったら、どこにいるのか探してみてくださいね。

 

ボニン浄土

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【読書日記】7/6読了

『ボニン浄土』宇佐美まこと(小学館

読書後半「ううう、これはスゴイ本だ」と唸る。

江戸時代から続く小笠原の歴史を綴ったもの、

と思いきや、どうやらそうでもなさそうで、

現代に時間が移るとそれは群像劇になっているが

どうやら各人は、たゆたう歴史と文化に大きく

絡まっているらしい(ネタバレになるのでここまで)。

最初は要領が摑めずどうなるの?と読んでいったら

後半でズブズブとその海のような深さにハマリます。

自分が担当者だったら次回の直木賞候補に入れたい。

この本の凄さをもっと知って欲しいので、

よかったら皆さんも読んでみてください。

ハマリますよ。

 

 

 

 

輪舞曲(ロンド)

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【読書日記】6/28読了

『輪舞曲(ロンド)』朝井まかて(新潮社)

個人的2019年の No.1 が『落花狼藉』でありんして、

その作者・朝井まかてさんの新作となれば期待大。

で期待通りのすんばらしい小説でした。

時は明治末期から昭和のはじめ、

女優という言葉にまだ馴染みのない演劇界に現れ、

一瞬の輝きを放って消えた伊澤蘭奢という女性。

彼女の太く短い生涯を、取り巻いた男たちの述懐で

見せていく、いや魅せていくという手法。見事。

恥ずかしながら蘭奢も、徳川夢声も、内藤民治も

よく知らなかった自分にとって、すべてが鮮烈で

生き生きと活字から這い出てくるんですよ。

史料をなぞるだけの歴史モノが多い昨今、朝井さんの

作品はひとりひとりに魂がこもっている。

だから作中に吸い込まれていく。

こういう読書は年に数回もできないから、僥倖。

ごちそうさまでした。お相手は中井貴一でした。

 

 

 

 

 

世界と日本の名作 冒険の物語

【お仕事告知です】

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成美堂出版 世界と日本の名作 冒険の物語 

古今東西の名作をダイジェストで紹介する再話本。

不肖ワタクシ、「西遊記」「南総里見八犬伝」の

2作品を書かせていただきました。

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冬から春は、この二作品の原著にどっぷりだったな。

名大作とは何ぞや? がわかった気がします。

 同著内には他に

トム・ソーヤーの冒険」「十五少年漂流記

不思議の国のアリス」「銀河鉄道の夜」などなど、

名作がいっぱいです。

小学生のうちに読んでおきたい名作の数々、

ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。

 

水を縫う

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【読書日記】6/14読了

『水を縫う』寺地はるな(集英社

大阪郊外で暮らす、家族の物語。

一章の高校生の弟話を読んで、「あ、この作品好き」と思う。

連作短篇で章ごとに人物が入れ替わる手法はよくあるけれど、

どの視点にも、その人をしっかと見据えた優しさがあるのだ。

刺繍好きの弟、そつなく生きてきた姉、頑張る母、ダメな父。

それにお祖母ちゃんと、父を支える友人。

良質な邦画をじっくりと観ているような感覚でした。

 

これ、次の本屋大賞にノミネートされて欲しいな。

 

 

 

 

明け方の若者たち

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【読書日記】6/11読了

『明け方の若者たち』カツセマサヒコ(幻冬舎

恥ずかしながら著者の名前をこの本で知りました。

有名なウェブライターさんとは知らなかったです。

デビュー作となるこの作品、50代のオッサンにも

刺さりました。

2010年代を、20代として駆け抜けた若者の、

たぶんアルアル話だと思うのですが、

物の見方、感じ方が一歩引いた、やや俯瞰だから

文学として読み手に届いてくる。

昨今、リアリズム小説といえば小野寺史宣さんですが

この方のもかなり響いてくるんですよ。

フラれた彼女を引きずるくだり、下北沢の街の匂い。

何にでもなれる気がしてた20代。

でも何にもできず燻っていた20代。

なもんだから先が見えなくて、もがいていた20代。

過去に置いて来たものたちが、この一冊に詰まってる。

オンタイムの人も、遠い花火のように見ている人も、

こぼれ落ちる感情の言葉に引き付けられると思う。

プロフィールから察するに、著者の分身であると

思う主人公だけど、自分が同年代だったら友だちになりたい。

でもって高円寺の大将で一緒に呑みたい。

 

ビルマに見た夢

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【読書日記】6/11読了

ビルマに見た夢』古処誠二双葉社

第二次大戦時、ビルマを舞台にした戦場小説が

著作に多く、そのほとんどを読んでいます。

死と隣り合わせの臨場感と、現地人との交流、

軋轢、信頼、不和といった人間関係の縮図が

もう見事で見事で、世の中はもっと

古処誠二さんの作品に注目すべきだなあと

常日頃から思っているわけです。

兵站担当の西隈軍曹が、現地の山の民と交流し、

穏やかな仏教徒との価値観の違いを理解しながら、

それでも軍人としての任務を全うせねばならぬ葛藤。

敗色が濃くなる戦地での、日常を営む彼らとの

やりとりは、読む側もそこにいるような感覚を

体験させてくれる、良書だと思うのです。

 

もっともっと、多くの人に読んでもらいたいです。