鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

春の雪

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私事、モーニングルーティンで

古今の名作を一見開きずつ写文しております。

去年の夏から続けていたのが三島由紀夫の『春の雪』。

半年以上かけて、昨日、結願となりました。

大正期の華族社会を描く、映像化もされた名作ですが、

一字一字追っていくと、三島の筆致が見えてくる。

それをなぞっていくのは新鮮な作業でありました。

さあ次は谷崎潤一郎でも写文しようかな。

 

俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

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【読書日記】4/10読了

『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』

桜木紫乃角川書店

読み始めて(あ、この本、好きだな)と直感する。

ひと昔前の道東の町、グランドキャバレーで働く

若者と、どさ回りの手品師、オネエ歌手、ストリッパー。

一見ベタな設定、展開に見えるのだけれど、

桜木さんの手にかかると、滋味深い文学に変わる。

ほんの一カ月の、彼らの交流譚なのだが、

それぞれの人生がじんわりと見えてきて、染みる。

北国の寒さ、それを和らげる人情の温かさに

心休まる読書となりました。

 

土葬の村

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【読書日記】4/10読了

『土葬の村』高橋繁行(講談社現代新書

ここ最近読んだノンフィクションもので、

一番インパクトのあった本です。

日本の火葬率は99.9%とのことですが、

じゃあ残り0.1%は、となると土葬等がある。

でもって、つい最近まで近畿地方などで

残っていたという。その記録のあれこれ。

個人的記憶では幼少期、両親の在所の墓参りに

行った折、歩いていた土がボコッと凹んだな。

あれ結構怖かったなと。

忌み避けられるこのテーマを真正面から描き、

その内容の濃さに釘付けになりましたよ。

知らないことを知れる、これが読書の醍醐味デス。

 



 

どの口が愛を語るんだ

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【読書日記】4/1読了

『どの口が愛を語るんだ』東山彰良講談社

ども、ごぶさたす。本は毎晩読んでいるのですが、

紹介したいものは……なかなかなく、と思ったら、

東山さんの新作が、なかなかに刺激的でしたのよ。

4つの中短編集。各話の関連性はないようですが、

それぞれの話の「濃さ」が、なかなかにいいなと。

孤独な少年のモノローグや、台湾LGBT、SF等々。

ヒリヒリするような筆致は、この著者の味ですが、

設定がありそで、いや、なさそな着眼点が見事で、

これは唯一無二の世界観だなあと。

直木賞作家さんだけれど、掲載誌は『群像』などでして、

たしかにこれ、文学だなと思った次第でした。

本好きが好きになる本、みたいな印象です。おすすめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

アンブレイカブル

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【読書日記】2/28読了

アンブレイカブル柳広司角川書店

著者のスパイものが結構好きで、本作もそんな感じかなと

読んでいくと、どうやらそうではない。

連作短編となっている各話には小林多喜二、鶴彬など

実在の人物が登場し、背後に戦前国家の闇が忍び寄る。

社会派ミステリーのド直球を見せていきながら、

終章では狂言回しである官憲の煩悶があるなど、

これは一言では言えない凄さがあると読了後、嘆息。

治安維持法の成立から100年も経っていない今、

この重いテーマにミステリ手法で切り込んだ著者の

意気込みに、ただ、ただ、脱帽するしかありません。

見事です。

この本、何らかの賞をとると思います。

 

 

 

 

ははのれんあい

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【読書日記】2/15読了

『ははのれんあい』窪美澄角川書店

テーマはド直球で「家族」。

このテーマは小説の鉄板として昔昔からあるわけで、

有吉佐和子山崎豊子谷崎潤一郎重松清、etc.

巨匠達がこれでもかと重厚な物語を描いている。

では窪さんが描く家族とは? と読んでみる。

冒頭は新しい命が誕生する、ごく平凡な家庭のはずが、

徐々に歯車が狂いはじめて濃密な展開になる。

このあたりは窪さんの著作をずっと読んでいる身として

うむうむ、だよねえ、となるわけだけど、

思うに家族ってのは、一人一人の人間が集まったもので、

確執もあれば相愛もある。

だから面白いのかも知れないが、ここに時を経ての

変化が生じることから、グイグイと引き込まれる。

小さな幸せを噛みしめていた母親が、

後半、息子の視点になることによって他人になる。

その変化! 当たり前のようで、これはこの人にしか

書けない小説だなあと、舌を巻くカメレオン。

令和の世となった今、新しい家族の小説がここにある。

特にP278〜279、祖母が孫に語るセリフが、もう……。

「……今はおだんごみたいに一緒にくっついているけれど、

そこから一人離れ、二人離れていくんだよ。家族って、

そういうもんだろいう」

「それでも家族は家族。離れて暮らしていても、心さえ

通じ合っていればそれでいいんだよ……」

 

なかなかに刺さりました。

オススメしたい一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大阪

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【読書日記】2/14読了

『大阪』岸政彦、柴崎友香河出書房新社

大阪で育った作家、大阪で暮らす作家の交換エッセイ。

両人とも大阪の町に対する愛が溢れていて、いい。

でも決して美辞麗句を並べているわけではない。

自分が生きてきた足跡を辿りながら、

その足跡を残した街のあれこれが、人との関わりで

紡がれていく、そのヒリヒリするような筆致が、いい。

私事、この町に4年ほど暮らしていた時期がありました。

俯瞰してみる大阪、中にいる大阪、

どちらの筆者の視点も冷静で、距離があって、でもって

やっぱり好きなんだ、という気持ちが、いい。

また大阪に戻って、馴染みの店で飲みたくなりました。

 

 

 

 

 

今夜

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【読書日記】2/3読了

『今夜』小野寺史宜(新潮社)

ああ小野寺さん、巧いなあとうなずく。

市井の人々を描かせたらピカイチなのだが、

今作は群像劇、でありながら登場人物が

随所で絡んでくる。ある一夜を軸にして。

今夜は一度きりだが、四人の人物には

四つの今夜があるわけで、

しかも四つのストーリーが存在する。

当たり前だけれど、当たり前を書ける人は少ない。

一人一人の思いが行間から溢れてくる。

東京の町が見えてくる。

鬱屈として、やるせなくて、それでも生きていく人の

息づかいが活字から聞こえてくる。

素敵な本だと思う。出会えたことに感謝したいです。

 

 

 

 

羊は安らかに草を食み

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【読書日記】1/30読了

『羊は安らかに草を食み』宇佐美まこと(祥伝社

宇佐美さん作品はずっと注目しているのですが、

ますます凄みが増してきていると思っております。

例えば去年読んだ『ボニン浄土』

「うわ、何これ、すご……」と圧倒されましたし。

そして本作も、グイグイ引き込まれました。

三人の老女のロードストーリーと思いきや、

主人公の回想譚における、満州引き上げの話と

徐々にわかってくるその後が深くて、重い。

ひっさびさに本を読んだぁ、って感覚になりました。

ああオレ、こんな本を読んでなかったなあと。

ああオレ、こんな本を読みたかったんだあと。

ありがとうございました。楽しませていただきました。

勉強させていただきました。

 

騙る

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【読書日記】1/28読了

『騙る』黒川博行文藝春秋

黒川さんの作品はどれも当たりなので、

今回も予備知識一切ナシで手に取ってみたところ、

これまた頗る面白かったのでございますのよ。

関西が舞台のノワールもの、

けれどイケイケのヤーサンでなく、悪徳警官でなく、

登場するのは古美術界を暗躍するくせ者たち。

その騙し騙されの連作短編がグイグイと読ませる。

古美術の知識がなくても十二分に面白いです。

楽しい読書でした。ありがとうございました。