鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

狂犬の眼

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【読書日記】4/8読了

『狂犬の眼』柚月裕子(角川書店

先日、『盤上の向日葵』を絶賛したばかりですが、

『孤狼の血』の続編である本作も面白すぎて、

次の日早く起きなきゃいけないのに(6時起き)、

結局、本を閉じることができなくて、読了する1時迄

読み耽ってしまった。眠不足だけど、しあわせ。

前作では、ヤクザ社会と繋がる先輩刑事の元で習練を積んだ

日岡が、左遷された広島県山中の駐在所にいる。

組の抗争事件で指名手配中の大物がやってくることで、

彼の人生が、また、大きくうねり出す……という筋書き。

黒川博行作品ばりの警察&ヤクザ社会のえぐいリアルなのに、

(あ、ワタシ、黒川先生の著作も大好物です)

どうしてこんなに惹かれてしまうのかと考えてみますに、

言葉の運び、特に風景描写の巧さが好きなのかなと。

骨太ハードボイルドでありながら、繊細でリリカルでもあり、

ああ、読んでよかったと、心の底から思える作品でした。

 

 

 

じっと手を見る

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【読書日記】4/5読了

『じっと手を見る』窪美澄幻冬舎

デビュー作からずっと追い続けている一人に、

この窪美澄さんがいます。

決して明るいとはいえない作風なのですが、

もがきながら生きる人の姿をじっと見据えて、

そこに仄かな希望を与えてくれる。

ひりひりとした読書にいつも痺れています。

さて、本作も間違いなく傑作だと思います。

富士山の見える小さな町に暮らす孤独な女性、

そんな彼女を気にかける男性。

都会から来たエグゼな男の出現で、それぞれの

関係にズレが生じ、流されていく。

閉塞した家庭環境、身動きのとれない現状、

縛られ、くすんでいく感情……どれをとっても

作者の筆致は心の襞に染み込んでいき、

それでも生きていくんだ、というリアルを

見せてくれます。介護職という現場もわかるし。

大ざっぱに言えば恋愛小説なのかも知れませんが、

読むと「生きること」を描いている、とわかる。

 

吉田修一の著作が好きな人なら、

この感覚、きっとわかってくれると思います。

掌の小説

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数年前からやっていることなんですが、

尊敬する先生方の名作を丸ごと一冊書き写す、

(といってもPCにタイプしていく作業ですが)

これを朝の日課にしています。写経ですね。

本日(4/5木)昨秋から始めた川端康成の名作、

『掌の小説』全122話、約600Pの写文が結願。

自伝的な幼少期のもの、晩年の耽美的なもの、

ギューっとエキスのつまった掌編たちは、

とにもかくにも刺激的でありました。感謝!

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樽とタタン

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【読書日記】4/4読了

『樽とタタン』中島京子(新潮社)

読んでいて幸せな気持ちになれる本。

現時点で2018年の No.1 (俺基準)。

少女時代を回想している連作短編です。

主人公の少女が、放課後に預けられている喫茶店。

そこの常連さんたちとの何気ない会話と、

さして大きな事件が起こるわけでもない日々の

あれこれがノスタルジックに綴られていて、

なんかこう、溜息が出ちゃうほどイイ世界観に

なっていて、良質な外国文学を読んでいるような気分。

アリス・マンローを読んだときの感覚に近かった)

しみじみと、まったりと読める、久々に贅沢な読書。

出会えたことを幸せに思います。

 

 

ウチのセンセーは、今日も失踪中

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【読書日記】4/1読了

『ウチのセンセーは、今日も失踪中』山本幸久幻冬舎文庫

私事、ずっとファンであり、デビュー作から追い続け、

最新作が出ると、必ず読んでいる作家さんがおります。

順不同敬称略で浅田次郎吉田修一窪美澄

そしてこの、山本幸久センセーです。

漫画家アシスタント君の奮闘を描いた著者十八番のお仕事モノ、

でありながら、もう一つの系統である青春モノの要素もあって、

実直な主人公の、マンガにかける想いがヒシと伝わってキュン。

クセのある脇キャラ、マンガ業界話など、読み所は多々あれど、

個人的には「でもおれ、この仕事、好きなんだよね」ってのが、

全篇通して伝わってきて、これが山本作品の好きなところです。

肩肘はらずに読めるのも好き。文体が自分に合っているのかな。

もう一冊、新刊が出てるので、そっちも読まねば。

 

 

水田マリのわだかまり

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【読書日記】3/28読了

『水田マリのわだかまり宮崎誉子(新潮社)

タイトルに惹かれて手にした本なんですが、

何だろう、エライものを読んでしまった感。

(イイ意味で、ですよ)

ポプテピピック』を活字にしたら、こんな感じに

なるんじゃあないかという短編が2作。

田舎町に住むマリちゃんは、母親が失踪し、

自身は三日で高校を辞めて洗剤工場につとめる。

で、そこで出会うクセが強い人たち、との話。

もう一編の老父母の老いに接する中年女性の話も

リアルに突き抜けてて、じわじわ、ひりひりくる。

フツーの読書に飽いていた自分には、久々に刺激的な

一冊でありました。この作者さん、注目していこう。

 

 

 

 

長く高い壁

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【読書日記】3/22読了

『長く高い壁』浅田次郎角川書店

敬愛する心の師、ジロー先生の最新作はミステリー!

ファン歴長いアタクシですが、ミステリーってあったかな?

と思うくらい珍しいのではと思っております。

部隊は戦時中の中国、日本軍の従軍作家と中尉が

憲兵とともに「小隊10人全員死亡」の謎を解く、話。

近現代中国、日本軍、ともに先生ならでは舞台設定、

なのですが、ここにガッツリとミステリー。脱帽!