鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

じっと手を見る

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【読書日記】4/5読了

『じっと手を見る』窪美澄幻冬舎

デビュー作からずっと追い続けている一人に、

この窪美澄さんがいます。

決して明るいとはいえない作風なのですが、

もがきながら生きる人の姿をじっと見据えて、

そこに仄かな希望を与えてくれる。

ひりひりとした読書にいつも痺れています。

さて、本作も間違いなく傑作だと思います。

富士山の見える小さな町に暮らす孤独な女性、

そんな彼女を気にかける男性。

都会から来たエグゼな男の出現で、それぞれの

関係にズレが生じ、流されていく。

閉塞した家庭環境、身動きのとれない現状、

縛られ、くすんでいく感情……どれをとっても

作者の筆致は心の襞に染み込んでいき、

それでも生きていくんだ、というリアルを

見せてくれます。介護職という現場もわかるし。

大ざっぱに言えば恋愛小説なのかも知れませんが、

読むと「生きること」を描いている、とわかる。

 

吉田修一の著作が好きな人なら、

この感覚、きっとわかってくれると思います。