鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

不定期連載

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第二話 「上あごに最中の皮」

風の中で信玄餅を食べる程の苦難を乗り切った国、

アルラカスの王女、ビルマリーは、

敵対する隣国の王子、アントニアルスに恋していた。

「ああ、愛しのアントニアルスさま、この想いを

 貴方さまに、どう告げればよいのかしら」

もどかしい想いをこじらせたまま、王女はある日、

吟遊詩人のフラフニーを王宮へ呼び寄せる。

「吟遊詩人よ、私の想いを詩にして、王子に届けるのです」

「お任せを」

恭しく頭を垂れた吟遊詩人はややあって、

一編の詩を、王女の前で朗々と語り出す。

「ああ、王子。私のこの想い、

 上あごに最中の皮がへばりつたようです」

「……よろしい」

王女の想いが届いたか否かは、誰も知らない。