鰹通信

文筆屋ささきかつお のblogです。近況、お知らせ、読書日記など書いてます。

不定期連載7

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第七話「老人とウニ」

気分転換に日帰り旅行に出かけ、ある港町の駅でおりた。

ウニが名物と聞いていたので、栗の林を抜けて漁港へ、

すると、

「そこの若い方、ちょっと寄っていかんかね」

道端で商いをしている老人に声をかけられる。

はて、ここに朝市があったか? 近寄ってみると、

発泡スチロールの箱の中に、黒々、トゲトゲが見える。

「これは、ここで獲れたウニですか」

「否」と、老人が返す。

「半分はウニだが、もう半分はここの名産、栗じゃよ」

「……?」

私は箱をのぞき込む。たしかに黒と、緑色が半々。

「若い方、旅でいらしたと察する」

「そうです」

「なら、ワシと勝負しようではないか」

「勝負?」

「さよう、どれがウニで、どれが栗か、見分けるのだ」

「そんなの」と、私は笑みを浮かべた。

だって、緑色は、まだ熟していない栗なのだから。

「若い方、緑が栗とお思いだろうが、違う、違う」

「は?」

「ここのウニは “緑ウニ" といって、若い栗イガに似ている」

「なんと!」

「そしてもう一つの名産は “黒栗" じゃ、だが若イガは緑色」

「ううむ」と私は唸る。つまり、区別がつかないのか。

「ところで」と、私は老人に別の話をふる。

「なぜここで、このようなコトをなさっているのですか?」

「年寄りの酔狂と思ってくだされ。さて、ウニはどれかな」

私は目を凝らして緑、黒のトゲトゲを見分けようとする。

「あ」と、簡単な見分け方に気づいた。

「動いていますよ。まだ生きている。なのでコレがウニ」

私が答えると、老人はフフと不敵な笑みを浮かべた。

「やはりご存じなかったのですな」

「何をです?」

「この町の名産  “黒栗" は、動くのです」

 「……」